こんにちは。樋口高顕/ひぐちたかあきです。
先日、日本IT団体連盟のイベントに参加、千代田区のDXについてお話ししました。
デジタル庁創設目前!自治体と考えるDXの未来
登壇者:
石川県 加賀市長 宮元 陸
東京都 千代田区長 樋󠄀口 高顕
OGC代表理事/IT連盟副会長 中村 彰二朗
モデレーター(IT連盟会長) 川邊 健太郎
当日の動画は現在もYouTubeよりご覧いただけます。
21年9月1日、デジタル庁が発足。国も体制を整え、動き始めることで大きな変動が予感されます。では住民サービスの最前線にある基礎自治体はどう考えているのか。
「地方」の自治体トップとして、力強いリーダーシップで積極的なDXを進めておられる宮元 加賀市長と、「都心」自治体の代表として千代田区を呼んでいただきました。
※今回、貴重なイベントにお声がけいただき、有難うございました。当日の様子は下記にまとまっています。
【イベント編集後記】デジタル庁創設直前 自治体と考えるDXの未来
石川県加賀市が先駆けるDX
今回、加賀市の取組みを興味深く伺いました。加賀市は、主力産業が温泉など観光と伝統工芸などものづくりで、昭和60年代は8万人だった人口が急減しており、現在6万5千人。21年1月、高齢化率は全国の28.4%より高い34.8%となり、「消滅可能性都市」に指摘されました。
宮元市長は、疲弊する地方、まさに山河の荒廃から、国力の停滞、日本の未来を憂う、こうした危機感のもと、全国に先駆けて様々な施策に取組んで来られました。
- e-加賀市民(電子市民)制度。人口・観光客の減少から、リモートワーカー・移住者の増加へ。「日本初・加賀市のe-Residency(電子市民)プロジェクトにxIDが参画」
- 20年8月、オンライン行政サービスを開始。スマホアプリで本人認証・電子署名、対面・押印レスへ。「加賀市がスマホで日本初のオンライン手続き、行政デジタル化の突破口は地方にあり」
- 現在、マイナンバー交付率は67.4%、全国トップ。コロナ禍の経済対策と合わせマイナンバーを普及。
千代田区はDXに本格的に着手
加賀市との比較で言えば、千代田区において、コロナ禍以前は、相対的にデジタル化へのニーズ(危機感も?)は弱かったのかもしれません。
人口は増加傾向にあり、行政サービスの面でいえば、区域が比較的狭く、区役所や出張所は区民の皆さんの徒歩圏にあります。公共交通の便も良い、まさに都心区の長所があります。
しかし、長期化するコロナ禍で、私たちの暮らし、働き方、何より価値観が変わりつつあります。
イベント内で報告された「消費者デジタル意識調査2021」でもあったように、デジタル化の進展で、買い物、教育、医療、行政などへの期待が大きくなっています。こうした新しい時代の転換期に、私が区長就任以降、注力する取組の一つがDXの推進です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)については、区議会本会議でも質疑を頂いてきました。本来、その意義とは、デジタル技術を活用し、新たなサービスやビジネスモデルを展開することで、業務そのものや組織文化・風土、働き方や社会そのものの変革に繋げ、生活をあらゆる面でより豊かに変化させていくことにあります。
これまで千代田区は、RPAやAI-OCRツールの導入で、業務単位で、生産性の向上やコスト削減などを効果検証してきました。
本年、令和3年度からは、区政の根幹となる3つのシステム(全庁LAN、総合行政、総合住民サービス)のリプレースを軸に、DXを加速させます。先日の所信表明でも申し上げています。
区民目線のオンライン行政サービスへ
DX推進の目的の1つは、区民目線で行政サービスを変革することです。
システムのリプレースを経て、区役所にわざわざ来庁せずとも、いつでも・どこでも手続きや相談ができ、一度提出した書類は再提出不要など、手続きがオンラインで、ワンストップでの完結を想定しています。
加えて、申請書類の電子化、来庁予約で待ち時間削減、手数料など支払いのキャッシュレス化など、利便性向上を追求します。
※現在の千代田区情報化指針。今後、(仮称)DX推進計画を策定し、区民の皆さまにご意見を伺う予定です。
若手職員によるDX推進プロジェクトも発足
あわせて、区役所の働き方改革も急務です。
現在、多様化した行政サービスの質と利便性を維持・向上していくためには、それを支える区役所職員の事務効率化や業務生産性の向上が必須だと考えています。
まさに今は、千代田の新時代への胎動期です。
10年、20年後も区役所を背負い、住民サービスの最前線に立つのは、まさに今の若手職員の皆さんです。そこで、区長・副区長を始め、部署を横断した有志の若手職員などで構成するDX推進PT(プロジェクトチーム)を立ち上げました。期待される区民サービスの在り方、また内部の業務改革、これからの働き方・ワークプレイスなどをテーマに、若手職員ならではの肌感覚やその熱量に期待しています。現在、抜本的な変革に向けた検討を行っています。
冷え込む地域経済、デジタルで消費を取り込む
すでに、デジタルの力で、疲弊する地域経済という喫緊の課題にも対応しています。
千代田区には本来、通勤・通学される85万人の昼間人口がおられます。
しかし、長期化するコロナ禍、インバウンドは勿論のこと、国内においても度重なる緊急事態宣言の発出、人流の抑制、急激に進展したテレワーク・オンライン授業で、人が動かず消費が起こらない。飲食や小売、サービス業など、千代田の活力や賑わいが急速に失われています。
先の第二回区議会定例会で補正予算を承認頂きました、キャッシュレス決済でポイントバックするPayPayキャンペーン in 千代田~ちよだのお店でお得に買い物~(第1弾は9/1からの1か月間)は、デジタルの力で消費を取り込むことも狙っています。
イベントでも申し上げましたように、千代田区には都心だからこそ、すでに集積しているヒト・技術・カネという長所があります。眼前にある喫緊の課題解決とともに、新たな活力、賑わいに繋がる千代田区の魅力を創出する施策を検討していきます。
変革の機運を逃さず、明るい未来を示す
長期化する感染拡大とコロナ禍による日常生活の変化で、区民の皆さまは、今なお大きな不安を抱え、社会全体に閉塞感が漂っています。
だからこそ、千代田区は、不安を払拭し、日常生活に明るさを取り戻せるような新たな施策に注力していかねばなりません。上記、申し上げてきたとおり、本格的に着手したDXもその1つです。コロナ禍という前例のない状況にありますが、明るい未来をめざした区政運営に果敢にチャレンジしていきたいと思います。