令和3年第3回千代田区議会定例会 招集挨拶を行いました。

おはようございます。樋口高顕/ひぐちたかあきです。

先日9月8日、令和3年第3回区議会定例会の招集挨拶を行いました。

招集挨拶では、

  • 今後の区政運営について
  • 令和2年度決算状況、令和4年度予算編成について
  • 新型コロナウイルス感染症への対応について
  • 地域経済対策について
  • 地球温暖化対策について
  • 今回提案した議案について

の6点を述べさせていただきました。以下、抜粋してお伝えします。

なお、当日のようすはインターネット配信もされており、こちらにて私の挨拶文を全文掲載しておりますのであわせてご覧ください。

<1>今後の区政運営について

8月の月例経済報告では、「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、一部で弱さが増している」との報告がなされました。

先行きについては、「持ち直しの動きが続くことが期待されるが、感染拡大による下振れリスクの高まりに十分注意する必要がある。」として、感染の動向が我が国経済に大きなリスクとなっていることに言及しております。

未だ続くコロナとの闘いに、区民や事業者の皆様の暮らし、活動に閉塞感も見受けられます。しかしながら、感染状況が予断を許さない中では、これ以上の感染拡大をくい止め、暮らしを守る取り組みが最優先課題であります。

私はこれまで、区民を守るために可能な限りの手を尽くしてまいりました。今後も刻々と変化する感染状況に的確に対応し、区民の皆様の命と健康を守り、暮らしを支えてまいります。

さて、我が国は、少子高齢化による人口減少局面に入り、内閣府の本年の高齢社会白書によると、2065年には65歳以上の高齢者一人を現役世代1.3人で支える社会が到来するとの試算もなされております。

住民にとって最も身近な基礎的自治体においては、財政面の影響のみならず、将来のサービスの担い手の確保など、サービスの提供のあり方そのものにも直結する問題であると認識しているところです。

一方、本区においては、今後も当分の間、人口が増加することが想定されております。

人口の増加は、コミュニティや経済の活性化など、地域の活力を生み出す原動力となる反面、行政需要にさまざまな変化をもたらします。すでに顕在化している、あるいは予見される課題に対し、中長期的視点をもって解決することが必要であると考えているところです。

このような中、新型コロナウイルス感染症は、私たちに「新しい生活様式への転換」、「DXの推進」、「働き方改革」など、さまざまな変革の必要性を突きつけました。とりわけ、DX推進の流れは今後一層加速します。

暮らしのあらゆる場面でデジタル技術が活用され、誰ひとり取り残すことなくその恩恵を享受できる社会をめざしていくことになります。また、働き方改革は、区民や事業者の皆様の生活のみならず、社会のあり方そのものを変えるものであり、区民の皆様の暮らしにゆとりをもたらし、生活の質を高めるものであります。

このように、新たな社会の到来を間近に控えた今、私たちは、まさに千代田の新時代に向けた胎動期にあると考えております。私は、直面する課題に的確に対応しながら、こうした変革の機運を逃さず、千代田区の将来像をお示ししてまいります。

社会情勢が目まぐるしく変化する中では、区民や区議会の皆様のご意見をしっかりと伺いながら、ともに将来像を描いていくことが重要であります。皆様のご理解とご協力を賜りながら鋭意、取り組んでまいります。

<2>令和2年度決算状況と令和4年度予算編成について

令和2年度決算状況について

先ごろ発表された令和2年度の日本のGDPの伸び率は、4.6%の減となり、平成20年度のリーマンショック時の3.6%減を超え、戦後最大の落ち込み幅となりました。また、有効求人倍率はオイルショック以来の大きな下げ幅となり、私たちの生活に多大な影響を及ぼしました。

本区は、昨年度の当初から一年を通じて、区民の生活を支えるサービスの継続的・安定的な提供に努めながら、区民の命と健康を守るため、新型コロナウイルス感染対策に全力を挙げて取り組んでまいりました。

また、第1号から5号までの5回にわたる補正予算のうち感染対策に必要な経費として、総額約184億円の予算を計上し、議会の皆様にも精力的にご審議を賜りながら、適宜適切に活用してまいりました。

この結果、不測の事態に備え積み立ててきました基金等を新型コロナウイルス対策に活用し、PCR検査体制やワクチン接種など必要な施策にいち早く着手することができました。

対策の財源に充てた基金につきましては、取り崩しを行ったものの、基金全体としては前年度の額に比べて46億円、3.9%の減に止めております。

一方で、特別区たばこ税の急激な減少のように、今後、区の歳入全体にも影響が出る可能性は否定できません。

また、従来から特別区長会を通じて訴えております、法人住民税の一部国税化や地方消費税の清算基準の見直し、ふるさと納税等の国の不合理な税制改正による影響につきましても、その動向を注視していく必要があります。

いずれにいたしましても、区民に最も身近な自治体の責務として、まずは区民の命と健康を守るためにあらゆる対策を図るとともに、健全な財政基盤をもとに、施設整備など多額の経費を要する中長期的な課題も見据えながら区政に取り組まなければなりません。

区は、その課題解決に向けて引き続き財政規律を維持し、ゆるぎない財政基盤を構築してまいります。

令和4年度予算編成について

区は、現在の感染状況を鑑み、その対策に全力を尽くしておりますが、長期化する感染拡大とコロナ禍による日常生活の変化によって、区民の皆様は、今なお大きな不安を抱え、社会全体に閉塞感が漂っております。

こうした状況であるからこそ、私たちは区民の皆様の不安を払拭し、日常生活に明るさを取り戻せるような新たな施策を展開することにも注力していくことが求められています。

そこで、令和4年度の予算編成では、令和2年度決算を踏まえ、各部において事務事業の総点検を行い、事務の効率化を図るとともに、事業の徹底した見直しや再構築に取り組んでまいります。

そして、令和3年度予算ベースから事務事業の見直しや再構築によって生み出した経費を、新たな施策を展開するための財源の一部に活用するとともに、必要に応じて基金の活用も検討してまいります。

これにより本区は、コロナ禍という前例のない状況にあっても、ポストコロナを見据えたメリハリある予算の編成に向けて全庁を挙げて取り組み、明るい未来をめざした区政運営に果敢にチャレンジしてまいります。

<3>新型コロナウイルス感染症への対応について

ワクチン接種について

本区でのワクチン接種は集団接種を基本として5月の下旬、高齢者を対象にスタートしました。医師会、薬剤師会、集団接種協力病院等のご理解とご協力のもと千代田区での接種は順調に進んでおります。

加えて区内クリニックでの個別接種、職域接種を加えると9月6日時点で千代田区民の1回目の接種率は約70%、2回目の接種率は約57%で、東京都平均を15ポイント程度上回っております。

高齢者に限れば85%の方が2回の接種を終えております。

10月末までには8割の方が接種を終える接種計画の達成にむけ、今後は30代以下の若い世代への接種を加速する必要があります。30代以下の若い世代の接種が順調に進むよう、ホームページに専門医のメッセージ動画を掲載し、SNSや防災無線、青パトで接種を呼びかけ、子育て世代へのチラシ配布などのさまざまな取り組みを続けてまいります。

令和3年第3回千代田区議会 定例会 招集挨拶 中継動画より

自宅療養者への対応について

感染症対策の切り札とされるワクチン接種は本区に限らず進められていますが、感染拡大の波は繰り返し、感染力の強いデルタ株による今年7月以降の第5波においては、働き盛りの40代・50代の重症者が増加し医療体制がひっ迫する状況になっています。

本区もその例外ではなく、本来であれば入院治療が必要な感染者が入院できず自宅療養者が急増しており、多くの区民が生命の危険を感じる切実な問題となりました。

区は自宅療養者の増加に伴い、入院調整に全力で取り組むとともに、区民が安心して自宅療養ができるよう、医師会による往診、電話・オンライン診療や、薬剤師会との連携による処方薬の宅配に加え、区内病院では、必要な患者には専門医が病状を確認したうえで、酸素濃縮器やステロイド剤の処方を実施しました。

さらに入院が必要になった場合に備え、一定数の病床を確保するなど医師会、薬剤師会、区内病院にご協力いただき、保健所がその機能を最大限発揮することで、綱渡りの状態ではありましたが、自宅療養者の方々がお亡くなりになるといった事案もなく現在に至っております。

今後、次の感染拡大の局面に備え、区民の命を守るため区独自にさまざまな自宅療養者等への対応策をさらに強化してまいります。

<4>地域経済対策について

千代田区は、グローバルな経済活動が展開される街であると同時に、地域に根差した中小の事業者の活動などにより、活気に溢れた地域経済が展開される街でもあります。まさに、千代田区に住み、働き、学び、集うさまざまな方々が一体となって街の活気と賑わいが創出され、それが活力ある地域経済へとつながっています。

しかし、長引く新型コロナウイルス感染症の拡大、それに伴う再三にわたる緊急事態宣言の発出と自粛要請や人流削減の呼びかけなどの影響により、街の活気や賑わいが失われつつあります。

そこで、新しい日常下における区民生活を応援し、地域における消費の喚起を図ることにより、小売・サービス業を中心とした区内中小店舗を支援するため、先の本年第2回区議会定例会でご議決いただきました、令和3年度一般会計補正予算第2号によります、キャッシュレス決済によるポイント還元事業「PayPayキャンペーンin千代田」を、9月1日から実施させていただいております。

また、本年度は、ウイズコロナ・アフターコロナを見据えた事業展開を行う区内小規模事業者の皆様への支援として、「チャレンジ・チェンジ小口応援補助金」を実施しています。

これは、補助金の申請前に区が実施する中小企業診断士によるワンストップ経営相談を受けていただき、そこで発見した経営課題に対する新たな取り組みを支援するもので、コロナ禍にあっても前向きな多くの小規模事業者の方々が、この補助金を活用して、新たな取り組みにチャレンジされています。

こちらの補助金につきましては、当初予算における想定を上回る多数の申し込みをいただいておりますので、より多くの事業者の方々に活用していただけるよう、取り組んでまいります。

区は引き続きコロナ禍にあっても、区内の中小事業者の皆様の経営を支援するためのさまざまな施策を実施して参ります。さらに、今後は、コロナ禍が収束した後の社会の状況を見据えたさまざまな支援策を展開していくとともに、地域経済の活性化につながる新しい千代田区の魅力を創出する施策についても積極的に進めてまいります。

<5>地球温暖化対策について

去る8月9日、気候変動分野における重要な政府間組織である「気候変動に関する政府間パネル」IPCC作業部会の報告書が公表されました。「人間の影響が地球を温暖化させてきたことは疑う余地がない」と言明し、世界中のほぼすべての地域で、命にかかわる熱波や豪雨などの極端な現象が増加したことが初めて報告されました。

また、8月以降、数日間で年間降水量の5割近くを記録するような豪雨が各地で発生しました。気候危機は、人々の生存を脅かすものであり、IPCC報告書の危機感を現実のものとして強く感じたところであります。

翻って、千代田区は、我が国の政治・経済の中枢機能が集積し、活発な都市活動が繰り広げられるエネルギーの一大消費地であります。しかし、この千代田区で「ゼロカーボン」を実現することは、東京の、日本の、そして世界の気候危機への対応を先導するものであると考えます。

本定例会で、地球温暖化対策条例の改正をご提案いたしますが、これは、「2050ゼロカーボンちよだ」という旗印を条例によって明らかに示し、それに向かって区が多様な主体とともに知恵を絞り、行動し、ともに気候危機に立ち向かうためのものであります。

さらに、条例改正に合わせ、温暖化対策推進計画を改定するとともに、気候変動適応計画を策定し、地球温暖化対策を総合的・計画的に推進し、施策の強化・加速を図ってまいります。条例・計画は、これまで、区民・区内事業者や有識者で構成する懇談会での検討や議会のご議論を経て8月にパブリックコメントを実施し、検討を深めてまいりました。

今後、条例・計画に基づき建築物の脱炭素化、街区規模の面的エネルギー活用の推進・拡大、デジタル技術を活用した都市エネルギーのスマート化を推進してまいります。このほか、再生可能エネルギーの普及促進、地方と連携した森林整備などにも取り組みます。

また、こうした緩和策はもとより、水害など災害の激甚化への対応、熱中症対策など気候変動適応策も実施してまいります。千代田区には、脱炭素社会に向けてさまざまな技術開発、イノベーションに取り組んでいる大企業、先進的な事業者が集積しています。また、地球温暖化対策に対する高い関心をもつ区民、在勤、在学者の方々が多く活動しておられます。

私は、こうした多様な主体の力を結集し、2050年には「ゼロカーボンちよだ」を実現するべく、全庁を挙げて取り組みます。

さらに、昨年6月に区議会での「気候非常事態宣言」に関する決議を重く受け止め、条例改正や計画策定を受け、区として気候非常事態宣言をいたします。議会とともに、気候危機への対応に努めてまいりますのでご理解をお願いいたします。

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